車の情報誌「ニューモデルマガジンX」編集長監修
ダイハツ・ムーヴは同社のハイト系軽自動車の先駆けとも言えるモデルで、1995年の初代デビューから今年で30周年を迎えた。これまでに累計約340万台が生産された人気車あり、6月に登場した最新モデルは7代目にあたる。先代の6代目は2014年にデビューし、2023年まで10年近くにわたって生産された。本来であれば直後に7代目が登場する予定だったが、認証試験不正の影響によって発売が2年も伸びてしまった経緯がある。
新型ムーヴの最大のポイントは、ついに後席ドアがスライド式に変わったことだろう。軽乗用車マーケットの推移を見ると、2003年に初代タントが登場して以来、同種のスーパーハイトワゴンが増え、いまや市場で約半数を占めている。同様にスライドドア車の比率は6割に達していて今後も需要は伸びる見込みだ。こうした展望に基づいて、ムーヴのスライドドア化が決断された。
また、カスタム系が廃止されたのも特徴だ。これは初代で設定された時と現在では商品ラインナップが大きく異なることに起因している。1997年に『裏ムーヴ』と称して発売された時、ダイハツの軽乗用車はミラ、オプティ、ムーヴの3車種だけで、多様化するニーズに備えることが『裏ムーヴ』投入の契機となった。しかし、いまではタント、タフト、さらにはコペンまでラインナップされて商品群の幅が広がり、ムーヴ・カスタムの必要性は薄れたという。
では、新型ムーヴはどんなモデルに仕上がっているのか、見ていこう。ダイハツによれば、ムーヴの名にふさわしい「動く姿が美しい端正で凛々しいデザイン」がコンセプトになっている。エクステリアでは軽快さと躍動感、凛々しく端正な印象を演出。新たに採用されたスライドドアとスタイリッシュなフォルムがうまく両立されている。スライドドア採用車は、ともすれば四角いハコになりがちだが、新型ムーヴはムーヴ・キャンバスと違ってAピラーが傾斜していてハコ感が抑えられ、シャークフィン状に設計されたリアクォーターピラーによって躍動感が演出されている。さらに、Aピラーが傾斜(=ルーフ前端が後退)しているおかげで、停止時に直上の信号機が見やすいといったメリットも生まれた。
ボディカラーはツートーンも含めて全13色も用意されている。ラインナップを絞った分、多彩なボディカラーの中から好みの色を選べるようにしたことで、個性を主張できるワケだ。上質感を訴求する新色のグレースブラウンクリスタルマイカは、初代からムーヴを愛用しているユーザーの年齢移行に合わせたものだろう。また、さらなる個性を主張するパッケージとして「DANDY SPORT STYLE」と「NOBLE CHIC STYLE」も用意されている。
サイズは全長3,395mm×全幅1,475mm×全高1,655mm(FF車の数値。4WD車は1670mm)。ホイールベースは2,460mmで、先代とほぼ同じだ。車両重量は860~940kgで、先代の820kg~890kgに比べると40kg~50kg重くなっている。これは装備類の違いもあるが、やはりスライドドアを採用したことによる差と考えられる。
スッキリとしたインテリアは安心して運転できる見晴らしの良さを実現し、居心地の良さと落ち着いた質感の中に光る華やかさをめざしたという。
グレードを問わずインパネにブラウンのアクセントカラーが配されてオシャレな雰囲気に仕上がっているほか、ドアアームレストにもシートと同じファブリック表皮が貼られて仕立ての良さが表現されている。
視界を遮らない位置に備わる画面付きオーディオ(6.8インチまたは9インチから選択可)と、調整幅の広い運転席シートリフターのおかげで見晴らしは良好。全高とアイポイントが高すぎないことがムーヴの美点であり、大きな特徴とも言える。
今回のフルモデルチェンジではDNGAコンポーネンツが用いられ、高い基本性能と最新の安全性能が実現されたのも大きな特徴だ。プラットフォームからパワートレインまでブラッシュアップ。しかも、タントやキャンバスからの流用ではなく、ムーヴ専用にチューンされて作り込まれている。
グレード展開はターボ仕様のRSと、NA仕様のG/X/Lの計4種類。それぞれのグレードにFFと4WDが設定されている。トランスミッションは全車CVTだ。 NAのKF型660cc直3DOHCエンジンは52ps/6.1kg-m、ターボのKF型660cc直3DOHCインタークーラーターボエンジンは64ps/10.2kg-mをそれぞれ発生する。ともにモーターによるアシスト機構は搭載していない。車重が増加していながら、NA、ターボともに従来モデルよりWLTCモード燃費値が約10%向上している点も朗報だ。具体的には、NAの2WDモデルで20.7km/Lから22.6km/Lに、ターボの2WDモデルで19.7km/Lから21.5km/Lに向上している。
サスペンションはフロントがマクファーソン・ストラット式コイルスプリング、リアはFFモデルがトーションビーム式コイルスプリング、4WDモデルは3リンク式コイルスプリング。タイヤサイズの相違に合わせてターボモデルのRSには専用のショックアブソーバーが採用されている。これにより、15インチタイヤを履きつつ滑らかな乗り心地を実現している。
安全面では、衝突回避支援が8種類、認識支援が5種類、運転負担軽減が2種類、駐車支援が3種類の計18種類からなる最新のスマートアシストを搭載。その他の安全機能として、VSC&TRC、ABS(EBD機能付き)、エマージェンシーストップシグナル等も搭載。また、ディーラーオプションで後付けも可能なプラスサポート(急アクセル時加速制御システム)、BSM(ブラインドスポットモニター)も用意されており、軽自動車と言えども抜かりなく乗員をしっかりとアシストしてくれる。
試乗したのはターボ仕様のRSとNA仕様のX。両車ともFFモデルだ。RSは最高出力64psで軽自動車の上限表示となっているが、ターボと思えないくらいにマイルドな印象。NA仕様と大差ないのかと思いきや、Xはさらにマイルドだった。燃費重視のセッティングで、こういった制御になっているのだろう。それでも不満なく普通に走ることができる。軽自動車の運転に慣れていれば受け入れられるが、普通車から乗り換えるのであれば迷わずターボ仕様のRSをオススメしたい。乗り心地そのものは決して悪くはなく、サスペンションのストロークもたっぷりと確保されている。首都高に多い道路の継ぎ目でも突き上げやハネるような動きは少なく、開発陣がめざした150~200kmのロングドライブもこなせそうだ。
さらに、試乗を通して感心したのは静粛性の高さだ。いや、正確に言うとノイズは発生しているのだが、何かの音が突出して耳につくこともなくバランスが取れているため、相対的に静かに感じられた。
一方で、アダプティブ・クルーズコントロールは安全デバイスとともにデュアルカメラで制御されているが、前走車を認識する精度が甘く、前方が渋滞している場面でもなかなか認識せず、不安になって減速が始まる前に自らブレーキペダルを踏んだ。この点に関しては開発陣も認識しているというから、いずれ改善されるだろう。
市街地(平均速度20km/h)を80km、郊外路(平均速度45km/h)を80km、高速道路(平均速度100km/h)を50km走らせたトータル210kmの総合燃費は、ターボ仕様のRSが満タン法で17.3km/L、車載燃費計で17.6km/L。NA仕様のXは満タン法で17.8km/L、車載燃費計で17.5km/Lと大きな差は出なかった。WLTCモード燃費値に対する達成率は、RSが約80%、Xは約79%と標準的な数値。もっとも、外気温度が40度近い酷暑の中での計測だったので、これより悪化するケースは少ないかもしれない。燃料タンク容量は30Lなので、一度の満タン給油でRS、Xともに520~530km程度走れる計算だ。
廉価版のLは135万8500円、メイングレードのXは149万0500円、ターボ仕様のRSは189万7500円と、世の中の物価が大きく上昇する中、かなり頑張った価格設定と言えそう(いずれもFFモデルの税込み価格)。30年目のムーヴがどう受け入れられるのか注目したい。
しんりょうみつぐ 1959年3月20日生まれ。関西大学社会学部マスコミ(現メディア)専攻卒業後、自動車業界誌やJAF等を経て、「ニューモデルマガジンX」月刊化創刊メンバー。35年目に入った。5年目から編集長。その後2度更迭され2度編集長に復帰、現在に至る。自動車業界ウォッチャーとして42年だが、本人は「少々長くやり過ぎたかも」と自嘲気味だ。徹底した現場主義で、自動車行政はもとより自動車開発、生産から販売まで守備範囲は広い。最近は業際感覚で先進技術を取材。マガジンX(ムックハウス)を2011年にMBOした。
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