電気自動車って維持費が安い?ハイブリッド車と比較してみた
環境面から注目されているEV車(電気自動車)ですが、実際に購入するときに気になるのは、どのくらいの維持費がかかるのか、ということです。
そこでここでは、EV車とHV(ハイブリッド)車の維持費を比べてみようと思います。
自動車専門ライター 高田 林太郎
環境面から注目されているEV車(電気自動車)ですが、実際に購入するときに気になるのは、どのくらいの維持費がかかるのか、ということです。
そこでここでは、EV車とHV(ハイブリッド)車の維持費を比べてみようと思います。
▼もくじ
車を所有するためにはいろいろなお金がかかります。たんに購入しただけでは維持することはできないのです。
そのときに必要となる費用のことを維持費といいます。まずはどんなお金が車を維持するためには必要なとなるのか、そこから確認していきましょう。
車にはさまざまな税金がかかっています。まず、所有していることで発生するのが自動車税です。これは毎年、4月末日現在の所有者に課せられます。
次に車の重さによって課せられる重量税というものがあります。これは車検のときに支払うことが定められています。さらに、加入が義務づけられている自賠責保険料も、車検時にかならず支払わなければなりません。
この車検というのは、新車登録時は3年後、その後は2年が車検有効期間となるため、2年ごとに合格しなければ公道を走ることができません。仮に無車検で公道を走行してしまうと刑事罰を受けることになります。
その車検を受けるための検査手数料や、業者が点検などをおこなうときの費用である車検基本料も必要となります。
車は車庫に保管することが義務づけられています。車庫証明というのはその車庫がどこにあるのかをあきらかにするためのものです。
自宅を所有していて車庫がある場合には費用は発生しませんが、賃貸住まいであったり複数台車を所有していて自宅に置けない、という場合には、駐車場代が発生します。これも維持費に含まれます。
車は走るためのもので、走るためには燃料が必要となります。EVの場合には電気を充電しますが、この電気料金が燃料代となります。
当然、走る距離によって必要な燃料代や電気代は違ってきますが、これも維持費に含まれます。
任意保険というのは自動車損害保険のことで、自賠責保険とは違って強制的に加入する必要はないものです。しかし事故というのは、どんなときにどんなきっかけでおきるかわからないし、いつ巻き込まれるかもしれません。
とくに対人賠償額や対物賠償額は年々高額化していて、億単位の金額となることもいまや珍しくありません。そういうことにも対応できる任意保険にはかならず入っておいていただきたいですし、車を維持する上で任意保険料は必要不可欠なものといえます。
メンテナンス費とは、整備などで必要となる費用のことで、安全に車を走らせるために、いい状態を維持するために必要な予算、ということになります。
たとえばハイブリッド車の場合はエンジンを搭載していますので、定期的にエンジンオイルを交換しなければ、エンジンをいい状態に保つことができません。しかしEVでは駆動力はエンジンではなくモーターがすべて受け持っていますので、エンジンオイルというもの自体が存在していません。
そのほか、タイヤ交換やワイパーブレードの交換などといったメニューへの出費は、どちらにも共通して必要となります。
EVやハイブリッド車は環境に優しい、ということから、普及を促すために税制面で優遇されています。エコカー減税と呼ばれているものがそれです。
その具体的な内容を見ていきましょう。
まずEVは、購入時に国から補助金を受け取ることができます。上限額は85万円で、軽EVの場合には上限55万円となります。
一方ハイブリッド車は、外部からの充電が可能なプラグインハイブリッド車に対して補助金が支給されます。こちらの上限は55万円です。
加えて、各地方自治体が独自におこなっている補助制度の利用も可能となっているため、純粋な内燃機関を搭載した車よりも購入しやすくなっています。
いわゆるエコカー減税については、2023年度の税制改革によって2026年3月まで延長されることが決定しました。
ただし、本2024年1月からハイブリッド車の燃費基準が段階的に引き上げられることも決まっています。
まず自動車重量税ですが、現状ではEVに関しては2026年4月末まで、100%免税となっています。
ハイブリッド車については2030粘度燃費基準を100%以上達成している車については同じ期間免税となりますが、90%達成率の車は2025年4月までは免税で、次年度は50%の減免、80%達成の車は2025年4月末までは50%の減免で次年度は25%の減免となります。
詳しくは以下の表をご覧ください。
期間 | ハイブリッド車・ガソリン車・クリーンディーゼル車 ※1(2030年度燃費基準※2) |
電気自動車等※3 | |||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
60% | 70% | 75% | 80% | 90% | 100% | 120% | 125% | ||
2019年5月~ 2023年12月末 |
▲25% | ▲50% | 免税 | 免税※4 | |||||
2024年1月~ 2025年4月末 |
軽減なし | ▲25% | ▲50% | 免税 | 免税※4 | ||||
2025年5月~ 2026年4月末 |
軽減なし | 本則税率 ※5 | ▲25% | ▲50% | 免税 | 免税※4 |
※1 クリーンディーゼル車は、2023年12月末までは特例措置として、2020年度燃費基準達成の場合は免税、未達成の場合は当分の間税率となり、2024年1月以降は上表に従う。
※2 減免対象は2020年度燃費基準を達成している車両に限る。
※3 電気自動車等には、電気自動車、天然ガス自動車(2009年排ガス規制+NOx▲10%又は2018年排出ガス規制適合)、燃料電池車、プラグインハイブリッド車が含まれる。
※4 新車登録後3年目に実施する初回継続検査についても免税。
※5 2025年5月から2026年4月までに自動車検査証の交付を受ける車両で、①2018年排出ガス規制に適合、②2018年排出ガス基準値より50%以上窒素酸化物の排出量が少ない、③2030年度燃費基準を75%達成、の全てを満たす車両は、本則税率を適用。
次に自動車税ですが、こちらもEVはハイブリッド車はグリーン化特例として優遇されています。
自家用車として登録されているEVは、自動車税は75%減税措置がとられています。軽EVは1年目は免税、2年目は75%の減税です。
プラグインハイブリッドも含むハイブリッド車の場合には、2030年度燃費基準に対しての達成率で自動車税の減免額が決まります。
また、環境性能割という、自動車を購入するときに支払う必要がある税金についても、EVの場合は非課税となりますが、ハイブリッド車は2030年度燃費基準に対しての達成率によって税率が変わります。
EVは出かけた先だけではなく、夜間に安い電力を使って自宅で充電できる、というのが大きなメリットになっています。維持費の安さというのも、自宅充電のことを考えているからで、出先だけでの充電して走っているのでは、それほど大きなメリットを享受できません。
そこで必要となるのが自宅充電設備となります。これを導入するために必要な費用は約10万円程度ですが、これはあくまで充電できる、というだけのものです。
V2Hといわれる、車両を蓄電池としても使える双方向システムを導入するためには専用のV2H機器が必要となり、80万円程度の費用が必要となります。
もちろん一度導入してしまえば、EVを買い替えても使うことができますので損にはなりませんが、こういった初期費用の減価償却も含めて考えると、維持費は若干高くなってしまいます。
メンテナンス費用で問題となるのは、タイヤ代です。ヨーロッパではすでに、タイヤの粉塵抑制のための法制化がおこなわれていますが、ハイブリッド車と比べて大容量の蓄電池を搭載しているEVは、そのぶん車重が重くタイヤがすり減りやすくなっています。
とくに、専用タイヤが用意されている夏タイヤはまだしも、スタッドレスタイヤはゴム質が柔らかく、車重が重いとそのぶん減りも早くなって交換頻度が上がってしまいがちです。
また、重いと聞くとブレーキパッドの縁も気になるところですが、これに関しては減速方向の力を充電に利用する回生ブレーキを多用していることから、一般的な車よりも減りが少ない傾向があり、心配はありません。
EVでよくいわれるバッテリーの容量減少と、それによって必要となるバッテリー交換については、現在バッテリー管理技術が日に日に進化しているため、新車購入から10年ほどは問題なく使えるはずです。
ただし、その期間を超えると一気にバッテリーの劣化が進む可能性があり、そうなるとバッテリー交換に50〜100万円ほどの部品代と交換工賃が必要となる可能性があります。
このバッテリー寿命については、急速充電の頻度などでも違ってきますので、一概にはいえません。まだ一般化してから歴史が浅いEVだけに、今後の情報にも注意しておきたいところです。
今回はEVとハイブリッド車の維持費の違いについてご説明しました。
EVは普及促進という面もあって、補助金制度や税金の優遇措置がとられていること、そして現状では燃料代よりも安い電気料金で充電し走ることができるということから、維持費という部分では有利となっています。
ただし、その有利さを活かすためには自宅に充電設備を備える必要があり、その点から賃貸住宅などにお住まいの方は、有利さを活かしきれないという点に注意が必要です。
また、メンテナンスについては、とくにタイヤの減りにご注意いただきたいと思います。標準装着されている夏タイヤはともかく、雪道や凍結路でグリップする、寒冷地は必須装備となるスタッドレスタイヤはゴム質が柔らかいため、重くパワフルなEVでは減りが早くなりがちで、交換頻度が増える可能性があります。
お住まいの地域や電力会社の料金によってもそうですし、街中だけしか使わないのか、長距離走行が多く出先での充電頻度が多い、ということによってもEVの維持費は大きく変わってきます。
EVを検討される際には、そういった車の使いかたも考慮して比較をしてみてください。
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