アルファード／ヴェルファイアに加わったPHEVは高い静粛性とスムーズなEV走行が魅力

車の情報誌「ニューモデルマガジンX」編集長監修

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月間ニューモデルマガジンX編集部
代表取締役社長兼編集長

神領　貢

いまや、トヨタ車のトップモデルに君臨していると言っても過言ではない、LLクラスミニバンのアルファード／ヴェルファイア。かつてのフレーズ「いつかはクラウン」は、いまや「いつかはアルファード／ヴェルファイア」となり、所有を考えている熱狂的なファンも多いことだろう。

実際、街中には新旧を含め多数のアルファード／ヴェルファイアが走っている。また、公用車やハイヤー等でも使用されているのは、やはり広い室内や装備類の充実など、使い勝手の良さが重宝、そして評価されているからに違いない。

そんなアルファード／ヴェルファイアに、さらなる魅力的なモデルが追加された。6人乗りのプラグイン・ハイブリッド（PHEV）仕様だ。これで、ガソリン仕様、HEV仕様、PHEV仕様の3種類から選べるようになった。PHEV仕様は、カーボンニュートラルへの貢献と、快適な移動空間の実現をテーマに掲げて開発された。4代目にあたる現行モデルが登場した約2年前の2023年6月にPHEV仕様の追加は予告されていたので、1年半の期間を要して登場した。

現行4代目でプラットフォームを刷新したこともあり、アルファード／ヴェルファイアの乗り心地と快適性は大幅に向上した。今回のPHEV化によって静粛性が高まり、さまざまなシーンでドライバーはもちろんのこと、後席の乗員もさらなる「快適な移動の幸せ」を享受できる仕上がりになっている。

搭載されているパワーユニットは、177ps／22.3kg-mを発生するA25A-FXS型・2.5L直列4気筒直噴D-4Sエンジンに、フロント：182ps／27.5kg-mを発生する5NM型モーター、リア：54ps／12.3kg-mを発生する4NM型モーターを組み合わせたハイブリッド・システムだ。

駆動方式は4輪駆動のE-Four。従来のHEV仕様と同じパワーユニットではあるが、エンジン出力がHEV仕様の190ps／24.1kg-mから若干低くなっているにもかかわらず、システム出力は250psから306psに向上。その結果、0→100km/h発進加速タイムはHEV仕様の8.8秒から7.1秒へと大きく向上している。WLTCモード燃費値もHEV仕様の16.5km/Lから16.7km/Lへと、わずかながら向上。ちなみに0→100km/h発進加速は２．４Lガソリンターボ・エンジン搭載のヴェルファイア（8.3秒）よりも速いというから驚きだ。

キャビン床下には18.1kWhのリチウムイオンバッテリーが搭載されており、EVモードでの航続距離は73km（カタログ値）をマーク。実際にトヨタが調べたところ、ショーファーカーが一日に走る距離は約10～60kmで、70km走ることができれば大半のニーズをカバーできるとして、価格やパッケージングとのバランスも加味して仕様を決定したという。また、大容量バッテリーを搭載していることでエンジンを止めたままエアコンを使えるため、ドライバーの待機時間が長いショーファーカーに適している点も見逃せない。

PHEV化によって急速充電が行える点も魅力だ。約38分で約80％の充電が可能なので、出先での継ぎ足し充電でも時間を大きくロスすることはない。また、ヴィークルパワーコネクターが搭載されており、付属コネクターで一般家電製品の長時間使用も可能だ。アウトドアや災害時に役立つだけでなく、外部給電機能【V2H】を活用すれば約5.5日分の給電が可能で、万が一の災害による停電時でも安心して家庭の電源として活用できる。

EV走行時だけでなく、HEV走行時でもバッテリーのパワーを活用できるので、エンジン回転数の低減にもつながる。EV主体の走りと吸遮音材の最適化による静粛性が大きく向上しているのもポイントだ。具体的にはインパネ裏とスライドドアへの吸遮音材追加や優れた高密度の新素材カーペットがラゲッジ床下に採用されたこともあり、EV走行時に耳につきやすいロードノイズも大幅に抑えられている。ちなみに約120km/hまでエンジンを始動させずにEV走行できる。

車両重量は2,470kgで、HEV仕様と比べて180kgほど増加している。このため、サスペンションは設定が見直されてHEV仕様よりもバネレートをアップ。逆にショックアブソ－バーの減衰力は下げられた。さらに、床下が補強され剛性も高められている。また、大型バッテリーが低重心化に貢献しており、車体の動きが安定するメリットも生まれている。

アルファードとヴェルファイアで乗り味が差別化されている点はHEV仕様と同じだ。両車を乗り比べると、アルファードのほうが乗り味が柔らかくて大きな突き上げで車重を感じさせるような感触だったのに対し、ヴェルファイアでは揺れの収束が早く、落ち着きのある印象が強い。このあたりは好みの分かれるところだろう。

この他、ショーファーカーにマッチした「おもてなし」のブレーキ性能としてスムーズストップが新たに搭載されている。これはブレーキの踏み始めで制動力の前後配分を最適化することで前のめり感を抑制。そして停止間際にブレーキ抜きを車両側がコントロールする。これにより、熟練ドライバーが操作するようなスムーズなブレーキングを実現している。HEVのブレーキはシステム的にカックンブレーキに陥りやすく、HEV登場当初に比べればフィーリングは大きく改善されたとはいえ、雑にブレーキングすると、やはり乗員に不快な思いをさせがち。これを少しでも和らげようという新機構は、なかなか有効で魅力的だ。今後、他のHEVにも普及していくにことに期待したい。

PHEV仕様は6人乗りのExective Loungeのみの設定で、税込み価格はアルファードが1065.0万円。ヴェルファイアが1085.0万円。これはHEV仕様のE-Fourモデルより180万円ほど高い設定だ。おいそれと買える価格ではないが、一度試乗すれば、きっと「いつかはPHEV仕様」と思えることだろう。

なお、アルファードExecutive Loungeをベースにトヨタ車体が架装し、ショーファードリブンとしての価値を高めた4人乗り仕様（HEV・PHEV）のSpacious Loungeも設定されている。座り心地を追求したヘッドレスト・スピーカー付の専用リアシートが装備されており、足元はベース車に対して約420mmも広いスペースを確保。

ラゲージ洋服掛けや冷蔵庫も設置されている特別な仕様だ。

広い後座でゆったりとプライベートな時間を過ごせる1台に仕上がっているが、その分、価格もスペシャルで、PHEV仕様は1,480万円！（HEV仕様は1,272万円）。それでも、2000.0万円のレクサスLM500h EXECUTIVE（4人乗り）より約500万円安い。

このSpacious Loungeには専用オプションとしてペイントプロテクションフィルムが用意されている。ボディへの飛び石などによるキズつきを防止する効果に期待でき、洗車機にも対応。ボディのツヤが生かされるクリア仕様と、特別感が魅力的なセミマット仕様から選べる。熟練を重ねた作業員が手作業で貼るため、オプション価格は95万円に達する。