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16年ぶりのモデルチェンジで上質なデザインと電動化を両立した日産エルグランド

16年ぶりのモデルチェンジで上質なデザインと電動化を両立した日産エルグランド

車の情報誌「ニューモデルマガジンX」編集長監修

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[掲載日:2026年10月15日 更新日:2026年10月15日]

神領 貢

この記事の監修者

月間ニューモデルマガジンX編集部

代表取締役社長兼編集長

神領 貢


先代エルグランドがモデルライフを2~3世代分も引き延ばすことになったのは、マザー市場であるはずの国内が後回しにされていたからだ。「次はもうないのでは?」と気を揉んだファンも少なくなかっただろう。

ところが、当時の経営陣が「国内向け商品もしっかりと投入していくべきだ」と方針を変えたことで状況は動き出し、16年ぶりの世代交代が実現した。新型エルグランドはジャパンモビリティショー2025で先行公開された後、2026年7月16日にようやく発売にこぎ着けた。

大型ミニバン市場ではアルファード/ヴェルファイアがシェアをほぼ独占する状況が続いているが、このジャンルを29年前に切り拓いた自負がある日産は、新型をギラギラさせる方向には振らず、スマートな佇まいでまとめてきた。押し出しの強いラジエターグリルもメッキパーツも見当たらないのは、競合とは違う路線を選んだからだ。

エルグランド フロント

掲げられたデザインコンセプトは「The private MAGLEV(リニアモーターカー)」で、速さを感じさせる線と、堂々とした構えを両立させながら、どの角度から見てもシャープなシルエットと踏ん張り感が伝わってくるように仕立てられている。

フロントマスクを飾るのは、日本の伝統工芸「組子」から発想を得た幾何学パターンだ。散りばめられた菱形はひとつとして同じものがなく、すべて形が違うという凝りようで、このパターンはエルグランド伝統のリア横一文字ランプにも受け継がれている。逆スラントさせたサイドエンドは走り去る際の余韻を残しつつ、ルーフを長く見せる効果も兼ねている。

エルグランド リア

ボディカラーはモノトーン4色に加え、富士の黎明の一瞬を写し取った「FUJI DAWN -フジドーン-」と、古くから高貴さの象徴とされてきた「至極 -シゴク-」を組み合わせたプレミアムツートンも用意。このツートンカラーは25万3000円高のオプションだ。

開発を取りまとめた担当者によれば「運転していてワクワクするミニバンを求める声は多い」とのことで、存在感や快適性だけでなく、走らせる楽しさにまで踏み込んだ。パワートレインはキックスに続く5in1の第3世代e-POWERと、発電に特化した新開発のZR15DDTe型1.5L直3ターボの組み合わせ。モーター、発電機、インバーター、減速機、増速機の5つの部品をひとつのユニットにまとめており、駆動はすべてモーターが担う。

このエンジンが広い回転域で効率よく発電できるのは、点火の瞬間までシリンダー内の混合気をタンブルさせ続けているためだ。発電専用と割り切っている分、レスポンスの良さといった要素まで追い込む必要はない、と開発陣は説明する。この割り切りが効率につながっているものの、チューニング次第ではエンジン車用に仕立て直すことも可能だという。なお、圧縮比はエクストレイルの可変式と違って固定されており、その分コストも抑えられている。

エルグランド パワートレイン

これらのユニットを積むシャシーは先代の流用ではなく、コストをかけて大半が設計し直された。ルノーとのアライアンスで生まれたCMF-C/Dプラットフォームを使う案はなかったのか尋ねたところ、開発陣からは「企画当初は違うパワートレインを載せる計画で、そのユニットがCMF-C/Dのエンジンベイに収まらなかった。また、e-POWER化とオプション装着で最大2490㎏に達する車重はCMF-C/Dの許容重量を超えてしまう点からも使えなかった」との答えが返ってきた。専用シャシーへの投資が認められたのは、冒頭で触れた日本市場を重視する方針があったからにほかならない。

乗り心地の質と疲れにくさを支えるインテリジェント・ダイナミック・サスペンションは路面からのフィードバックを100分の1秒単位で拾い、減衰力を無段階に変化させる仕組みを持つ。道路の継ぎ目のような小さな入力は低減衰でいなし、大きくうねる路面では高減衰に切り替えて揺れを抑える。この制御はドライブモードと連動しており、コンフォートを選ぶと効き具合がわかりやすい。ただし、揺すられる傾向が出てしまうのは、他のミニバンにも共通する弱点と言えるだろう。ちなみに、ドライブモードはエコ、スタンダード、スポーツ、コンフォート、スノー、パーソナルの6種類が用意されている。

フラットな乗り味を支える、もうひとつの柱がe-4ORCEで、全モデルに搭載されている(2WDは設定されていない)。発進と減速の際に後輪モーターの駆動力と回生力を積極的に使い、ノーズダイブのような姿勢変化を打ち消す。コーナーでは後輪への駆動力配分を高め、必要に応じて内輪に制動をかけて向きを変える機能も盛り込まれている。出力とブレーキの作動状況はメーターディスプレイに表示され、制御の様子を目で確認することもできる。なお、停車直前にブレーキ圧をわずかに抜いてカックンブレーキを避けるスムースストップの効果も試乗中に実感できた。

静粛性の高さもすぐに伝わってきた。高遮音ガラスがフロントウインドウだけでなく三角窓と前後ドアにも入っており(BOSEオーディオとのセットオプション)、吸遮音材も潤沢に使われている。これに加えてアクティブノイズ・コントロール(ANC)が効いているため、全開加速時を除けば3気筒エンジンであることを意識させられる場面はほとんどない。このANCはサスペンションにも加速度センサーを備えており、エンジン音だけでなく、ロードノイズまで打ち消してくれる。

エルグランド ホイール

タイヤは全グレード共通の235/60R18で、試乗車はヨコハマのADVAN-V61を履いていた。特段うるさく感じることもなく、前後モーターのトルクを合わせるとV8エンジン並みの力強さで、動力性能にも不足はない。

エルグランド フロントシート

内装は高貴な紫とアイボリーを組み合わせて銀雪(ギンセツ)と名付けられている。センタークラスターとコンソールは木目を思わせるザラザラとした手触りが独特で、シフトセレクターはセレナと同じプッシュ式を採用。上級グレードに標準装備される14.3インチ画面は国内モデル初となる統合型で、メーターパネルと一体に見せる工夫が目を引く。

エルグランド ディスプレイ

Googleビルトインが内蔵され、すぐ下にはツライチの空調スイッチが並ぶ。また、スマホのワイヤレス充電は立てたまま行う省スペース方式で、ON-OFFスイッチはない。置くだけで自動的に充電が始まり、走行中にズレないようマグネットで固定される。

エルグランド 置くだけ充電器

各列で順にアイポイントが上がっていくシアターレイアウトは先代から引き継がれている。先代オーナーからは「競合車と並んだ時に見下ろされるのがイヤだ」との声が数多く寄せられており、視点を引き上げることは企画の早い段階から決まっていたという。その結果、先代より75mmほど高い位置に落ち着いた。

エルグランド コックピット

子育て層が中心のセレナとは違い、ここでは見晴らしの良さが優先されて室内フロアが高めに設定されている。目立たない部分だが、スライドドアのステップ高にも開発陣のこだわりが表れている。「さらにステップを高くして室内フロアとの段差を縮めることも可能だった。高くしても乗る時は問題ないが、降りる時にヒザを曲げる角度が増え、小柄な方は飛び降りることになって脚に負担がかかってしまう」といった理由から370mmの高さに落ち着いたそうだ。開口部には大型の乗降用グリップが備わり、悪天候時に重宝するハーフオープン機能も用意されている。

エルグランド 2列目シート

シート表皮は合皮ながら柔らかさが自慢のテーラーフィットを採用。無重力空間からヒントを得た日産独自のゼログラビティ・シートが用いられ、筋肉や背骨への負担が抑えられている。

2列目は素早く動かしたいスライド機構を除き、オットマンも含めて電動調整式に仕上がっており、ヒーターも内蔵。上級グレードにはベンチレーション機構もつく。上体を起こしたまま座れる日産伝統のデュアルリクライニングも健在だが、表皮が滑りやすくお尻が前へズレて姿勢が崩れやすいのは惜しいところ。移動中はシートベルトが正しく掛かる角度で座るよう心がけたい。アームレストがハネ上げ式で、乗降時に干渉しないのはうれしいポイントだ。また、助手席と2列目左右の3席でオットマンを同時に使えるのも特徴だ。

エルグランド 3列目シート

荷室まわりの使い勝手も良好だ。3列目はスライドさせるだけでスペースを広げられる上、床面を下げるために前倒し式から左右ハネ上げ式に戻された。跳ね上げ位置は前方と後方の2カ所から選べるマルチアップ式で、位置によって荷室幅が変わるため、2列目のスライド位置に合わせて使い分けるとよい。7名乗車のままでも機内持ち込みサイズのスーツケースが7個収まるという。

エルグランド 荷室

電動ハッチゲートのスイッチはゲート中央部に加えてDピラーにも配置され、後方の余地が乏しい場所での積み下ろしにも対応する。

税込み価格はX e-4ORCEが689万7000円、G e-4ORCEが757万9000円。このほかにAUTECH、AUTECH LINE、VIPといった架装モデルもラインナップされている。すでに9000台を超えた受注を今後どこまで積み上げ、新型エルグランドが日産復権の真の象徴になり得るのか、市場の反応を見守りたい。

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