スズキの本格クロカンであるジムニーシエラをベースにした5ドアモデルのジムニーノマドは2025年1月30日に発表された。2018年の現行ジムニー発売以来、市場からは5ドアモデルの追加を望む強い声や問い合わせが絶えず寄せられていたという。そうした期待に応える形で登場したノマドは「本格的な悪路走破性を持つ5ドア・コンパクトクロカン4×4」をコンセプトに掲げ、ジムニー最大の魅力である高い悪路走破性を維持しながら、リアドアの採用とホイールベース延長によって後席乗員の居住性向上と荷室拡大を実現した4人乗りモデルである。
発売直後の市場の反響はメーカーの想定を遥かに超え、月販目標1200台に対してわずか4日間で目標の41倍にあたる約5万台(約3.5年分)という空前の受注が殺到した。これを受けてスズキは同年2月3日付で一時受注停止を発表せざるを得ない事態となった。報道発表会で鈴木俊宏社長はシエラのバックオーダーを多く抱える中での投入に慎重だった旨を明かしていたが、結果として消費者を長期間待たせることになってしまった。
同社は直ちに対応策を検討し、同年5月30日に生産能力の増強を発表。同年7月から日本向けの割当台数を月間3300台に引き上げて供給体制の強化を図った。その後、発表から1年が経過した2026年1月30日に仕様変更が施されて安全機能や快適装備が進化し、受注再開とともに7月1日に発売された。
ノマド最大の特徴は、シエラに対してホイールベースが340mm伸ばされてリアドアが追加され、後席居住性と積載性を高めたパッケージングにある。後席ヒップポイントはシエラより後方に50mm移動されて膝周りのスペースが拡大。その結果、BセグメントのコンパクトSUVを凌ぐ後席空間が確保されている。
同時に後席シートクッションの厚みが増してヒップポイントが20mm引き上げられたことで見晴らしの良さを実現。ただし、この着座位置上昇により、身長175cm以上の乗員では頭上に圧迫感を覚える可能性もある。
ラゲッジスペースに関しては4名乗車時の荷室床面長がシエラより350mm拡大し、荷室フロアには荷物が滑りにくいカーペット材が採用されている。また、シエラと違って4人乗車時の荷室容量確保を最優先したため、フロアを平坦にするラゲッジボックスは省かれていて後席前倒し時には段差が生じる。ただし、純正アクセサリーである専用ボックス(2万9700円)を装着すればフラットな床面を作り出すことが可能だ。
外観デザインはジムニー伝統の機能美とタフネスを継承しつつ、5ドアモデルにふさわしい上質感と扱いやすさを追求。フロントマスクには伝統の5スロットグリルが採用され、ノマド専用のガンメタリック塗装とクロームの縁取りを施すことで上質な表情が演出されている。
ボディ全体は車両姿勢や周囲の状況を把握しやすいスクエアフォルムで構成され、視界が良くて車両感覚は掴みやすい。また、前後バンパーやフェンダー周りには無塗装樹脂プロテクターが配置され、飛び石や泥はねに強いボディ構造に仕上がっている。前後バンパーの下部を切り上げた形状とすることで、過酷なオフロードにおいても障害物に接触しにくく高い悪路走破性が確保されている。
ちなみにアプローチアングル(36度)とデパーチャーアングル(47度)はシエラと変わらないが、ホイールベース延長によってランプブレークオーバーアングルは23度に設定されている(シエラは27度)。
カラーバリエーションは初期の全6色から仕様変更を経て全7色に拡充された。新色のグラナイトグレーメタリックが一番人気で、ブルーイッシュブラックパールが第2位、イメージカラーのシズリングレッドメタリック/ブラックルーフが第4位の支持を得ている。
走行性能およびメカニズムの基幹部分は信頼性の高いジムニーのアイデンティティを引き継ぎながら、ボディ延長と重量増加に合わせて最適化されている。搭載エンジンはシエラと同じK15B型1.5L直列4気筒ガソリンエンジン(燃料タンク容量40L)だが、速さを求める車両ではないため、必要十分だ。
駆動系には過酷な環境下で威力を発揮する副変速機付きパートタイム4WDが採用され、FRレイアウトおよび3リンクリジッドアクスル式サスペンションの基本構造を踏襲。
車体骨格はノマド用に補強されている。具体的には、延長されたホイールベースと増大した重量に対して必要な剛性を確保するため、センタークロスメンバーとXメンバーが加わっている。このほか、プロペラシャフトの径拡大や前輪ブレーキのベンチレーテッドディスク化など、随所にノマド専用の改良が施されている。
オンロード走行では340mmのホイールベース延長によって直進安定性と操安性が向上している。また、床下に配置されたフェルト材やリアクォータートリム内部の吸遮音材のおかげで、日常使用で支障のない静粛性と前後席間での良好な会話明瞭度が確保されている。
オフロードにおいては高い接地性を持つリジッドアクスル式サスペンションで車輪が浮きにくく、過酷な状況でもタイヤがしっかりと路面を捉え続ける。急な下り坂で車速を維持するヒルディセント・コントロールや、登坂発進時の後退を防ぐヒルホールド・コントロールがドライバーをサポートするため、オフロード走行に不慣れでも安心して運転できる。さらに、空転輪を制動して接地輪に駆動力を配分する電子制御ブレーキLSDもスタック時に素早く反応し、スムーズな脱出を可能にしている。
予防安全装備とADAS(運転支援システム)のブラッシュアップも改良モデルの見どころだ。初期型では衝突被害軽減ブレーキのデュアルカメラブレーキサポートをはじめ、後退時ブレーキサポート、後方誤発進抑制機能、AT車向けのアダプティブ・クルーズコントロール(ACC)が標準装備されていた。それが仕様変更後の最新型では、衝突被害軽減ブレーキが単眼カメラとミリ波レーダーを組み合わせたデュアルセンサーブレーキサポートIIに刷新され、車線逸脱抑制機能も標準化された。さらに、フロントパーキングセンサーが追加されたほか、ACCは全車速追従機能付へと進化し、AT車は車速ゼロまで対応して停止保持も可能になった(MT車は30km/h以上で作動)。
メーターパネル中央のディスプレイはカラー化され、スズキコネクトへの対応やバックアイカメラ付きオーディオのオプション設定など、利便性の高い機能が充実した点も見逃せない。
ノマド追加によってジムニーのユーザー層は従来の本格クロカンファンにとどまらない広がりが見られる。とくにノマドではAT比率が約9割を占めており、女性ユーザーの割合も想定を大幅に上回っているという。購入動機に関しても、生活環境上の必要性に留まらず「オシャレ」「カワイイ」といったデザイン性を重視した理由での選択が増えているそうだ。
ただし、スタイリッシュさや5ドアの利便性が加わったとはいえ、ノマドの本質はラダーフレームを備えた硬派な本格クロカン4×4である。モノコック構造の一般乗用車から乗り替えた場合、ジムニー特有の乗り味や操縦性にギャップを感じる可能性もあるため、購入検討時には事前に試乗して特性を確かめることをオススメしたい。












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